私が最近見た映画の中でも特に印象に残っている1本は、「トワイライト ささらさや」です。
2014年の11月8日に劇場公開された、深川栄洋監督によるヒューマンドラマになっております。
もとになっているのは加納朋子によるファンタジー小説になり、原作とは異なるキャラクター設定やストーリー展開によって映像化されている作品になります。
突然の交通事故によって大切な人を失ってしまった主人公のサヤの周りで、次々と巻き起こっていく不思議な体験が映し出されていきます。
いつまでも成仏することが出来ない彼女の夫・優太郎が、多くの人たちの身体に乗り移って出現する様子が感動的なストーリーになります。
生き残った者と死者との奇妙な繋がりからは、如何にして限られている人生を生きるのか考えさせられます。
肉親を失って孤独に生きてきたヒロインのサヤを、新垣結衣が多彩な表情で表現していました。
喪服を身に付けてお葬式で陰のある表情を浮かべているサヤにも、妙に色っぽいムードが漂っていました。
この世に未練を残して成仏出来することのできない優太郎の役には、大泉洋のコミカルなイメージがぴったりとはまっていました。
石橋凌扮する無理解な義父によって、サヤが愛する我が子と引き離されそうになってしまうシーンには胸が痛みました。
心機一転遠く離れた場所へと息子を連れて旅立ち、叔母の残した一軒家で生活を始めるのが印象深かったです。
たったひとりで寄る辺のなさを感じていた彼女が、シングルマザーや配偶者と死別した年配の女性をはじめとする同じ痛みを分かち合える仲間を見つけていく瞬間を上手く捉えていました。
青空うれしや古今亭菊志んなどの、実在する芸人さんたちがさりげないカメオ出演を披露しているシーンが見所です。
優太朗が落語家を目指すきっかけとなったエピソードが良かったです。冷酷非情の固まりのようだった優太郎の父親が、舞台で落語を聞いているときにだけ息子に見せた優しい表情には心温まるものがありました。
リアリティー溢れるタッチで再現されていく演目のシーンからは、真打ちを目指す若き落語家たちの情熱が伝わってきました。
人間の生き死にでさえ芸のネタへと変えてしまうポジティブさと、何処までも純真無垢なお笑いへの憧れには胸を打たれました。
寄席や落語を始めとする、昔ながらのエンターテイメントに造詣の深い方にはお勧めな作品になります。